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ジェファの一生

ジェファの一生

 

今夜は私の前世のお話。

 

昔々、あるところに(多分ヨーロッパの北の方の島)、ジェファという背の高い男の子が、お母さんと妹と暮らしていました。お父さんは小さい頃に海で亡くなったので、ジェファは覚えていません。家族で唯一の男だったこともあり、ジェファは無口だけれど、力仕事で頼りになる面倒見が良い少年でした。

 

大きくなると、村のほとんどの男の子と同じように、ジェファも鯨を獲る漁師になりました。力が強く、忍耐強かったジェファは、そこでもなかなかの働きをしました。終わって仲間で飲みにいくのも楽しみでした。でもある時船で腕を怪我したジェファは、もう漁には出れなくなりました。村の皆はとても同情してくれました。そしてジェファは、村の便利屋さんのような仕事で生計を立てることになりました。

 

でも実は、ジェファは心の中でほっとしていました。鯨漁は怖かったからです。ジェファは荒っぽいことが苦手で、村を綺麗にしたり、花を育てたりする方が好きでした。そういうわけで、本人は意外とその生活を楽しんでいたようです。

 

ジェファは一度だけ、はっきりとした恋をしました。相手はたまにいく酒屋で働く、ミケルという綺麗な人でした。ミケルはシングルマザーで、ある時からそこで働くようになりました。ジェファは一度も話しかけることができませんでしたが、ある時店が閉まる時間まで彼女を待ち、そこで自然と手を繋ぐことができました。そうして2人は一年ほど付き合いました。

 

ある夜、2人でいると、ミケルが泣きだしました。彼女が泣いている理由は、ジェファにも手に取るように分かりました。ミケルは今後の2人の関係が不安で、結婚がしたいのです。でも漁にもう出ることができないジェファは、どうしてもそれを言い出せませんでした。ミケルは綺麗だし、きっと他にいい人がいる。月に照らされたミケルの長い髪と濡れた睫毛が、とても綺麗でした。それからほどなく、2人は別れました。

 

ジェファはその後、村の外れの灯台守となり、そこで一生を終えました。死ぬ間際、ジェファは村に運び込まれ、そこには妹や昔の仲間をはじめとする村の人々がたくさん集まりました。そこでようやくジェファは、自分は受け入れられていたのだということがわかりました。本当はずっと話したかったけど、なんて言えばいいか分からなかった、と。次生まれ変わったら、綺麗なものは綺麗と、好きなものは好きって伝えよう、と。

 

そういうわけで、今世は東の果ての島国で、体力のないおしゃべりな女の子になりました、なんて。

 

 (今のあなたは、いつかの誰かが望んだ姿なのかもしれない。だから楽しんで。)

 

 

“とうだいもり”

くらい海をてらす光。

灯台には、灯台守がいる。

灯台守は嘘をつかない。どんなにささやかでも、ほんとうのことじゃないと、どこにも届かないから。