I love to just be individuals that’s very colorful
マイケル・ジョーダンがスーパースターだった頃は、片田舎のバスケ部で万年補欠だった私も、BSテレビでNBAの試合をドキドキしながら見ていた。ジョーダンと同じシカゴブルズにはやたら目立つ選手がいて、それがデニス・ロドマンだった。
その個性的な見た目や、常識はずれだけどパワフルなプレースタイルに憧れていた男の子も多かったのかもしれない。でも、当時の私からしたら、正直全然かっこいい選手ではなかった。なんというか、完全無欠のスーパースター(ジョーダン)や、爽やかで優等生なスポーツマン(ピペン)に比べると、自分勝手で変なやつにしか見えなかったのだ。とはいえ、彼はその後も活躍し、その活躍と同じくらいの奇行を重ね、2011に殿堂入りを果たした。NBAでは殿堂入りするとお祝いセレモニーがあり、そこでのスピーチでいろんな名言が生まれている。でも、私にとっての一番忘れられないスピーチは、思いもよらず、ロドマンのものとなった。
それをインターネットで見つけた当時、私はメンタルクリニックに通っていた。30歳くらいで、すごくまともな会社で一応ちゃんと働いていたけど、毎日自己嫌悪の連続だった。時間通りに会社に行くとか、電話に気づいて取るとか、書類の誤字をなくすとかそういうことが相当気をつけないとできない。ADHD傾向があるらしい。もらった薬を飲むと、頭の中がしんとして、自分はようやく修正されたと安心した。
でもそれは、物事の半分でしかなかった。私は何も楽しくなくなり、鏡の中の自分は目が静かで知らない人みたいだった。その時の夫は、薬やめた方がいいんじゃない?と言った。でも私は以前の自分に戻るのが怖くて、なかなか止める勇気がなかった。そんな時に、たまたまこの人のスピーチを見たのだ。
相変わらずとんでもない格好で、挙動不審で現れたけれど、スピーチ序盤からほぼ泣いているその人はとてもピュアに見えた。「I didn’t play for a money..i didn’t play the game to be famous.(試合をしていたのは、お金のためでも有名になるためでもない。)」とロドマンは言った。「I love to just be individuals that’s very colorful .(私はカラフルな個人でいたいだけだ。)」と。
私はそれを見て泣いてしまった。私も本当はそうだったから。私もカラフルでいたかったから。
誰だってきっと、間違えたくないし、周りに迷惑をかけたくないし、みんなに好かれるような人でいたい。でもそのために自分を殺してしまったら、なんのために生きているんだろう?
私は薬をやめ、会社を辞め、自分に合う生き方を探し始めた。もちろん全てがうまく行くわけはない。デニス・ロドマンだって、その後もトラブルメーカーのようだ。でも、多分それでいいんじゃないかな、と思う。カラフルな個人でいることに真摯に向き合っているだけだ。